遠い山なみの光:映画短評
遠い山なみの光
文学の味わい、テーマをそのまま映画に昇華させることに成功
原作の「感覚」をそのまま映画化することが理想なら、これはそんな一作。ただしその感覚は「不可解さ」でもある。
1982年に英国にいる主人公が、1952年の日本での生活を回想する構成だが、特に日本パートに言いしれぬ違和感が積み重なっていく。そこをどの時点でキャッチできるかで作品の印象も変わるはず(早いから良いわけでもない)。これは文学全般の魅力でもあり、映画としてその魅力の追求→成功例に。しかしテーマとしては「母親として娘への後悔」が通底しているので鑑賞後の余韻はことのほか深い。
キャストも総じて好演。中でも二階堂ふみは1950年代の日本映画からそのまま抜け出たような佇まいと台詞回しが美し過ぎた。
この短評にはネタバレを含んでいます