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『国宝』の背景に『さらば、わが愛/覇王別姫』 李相日監督が上海国際映画祭で明かす

上海国際映画祭公式上映の舞台挨拶に登壇した李監督
上海国際映画祭公式上映の舞台挨拶に登壇した李監督 - (C) 吉田修一/朝日新聞出版 (C) 2025映画「国宝」製作委員会

 吉田修一の小説を吉沢亮主演、横浜流星共演により映画化する『国宝』(公開中)が上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門カンヌ エクスプレスに出品され、現地時間6月18日に公式上映が行われた。李相日監督が上映後の舞台挨拶に登壇し、学生時代にチェン・カイコー監督の『さらば、わが愛/覇王別姫(はおうべっき)』(1993)を観て衝撃を受けたことが歌舞伎をテーマに映画を撮ってみたいという思いにつながったことを明かした。

吉沢亮・横浜流星・渡辺謙・田中泯、圧巻の歌舞伎シーン<16枚>

 本作は、原作者の吉田が3年の間歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験をもとに書き上げた同名小説が原作。戦後から高度経済成長期の日本を舞台に、極道の息子として生まれ、抗争によって父を亡くした後、上方歌舞伎の名門当主に引き取られた喜久雄の50年の軌跡を追う。女形として類まれな才能を持ちながら歌舞伎の世界で血筋を持たない喜久雄に吉沢亮、半二郎の実の息子として将来を約束された御曹司・俊介に横浜流星がふんする。第78回カンヌ国際映画祭「監督週間」部門に選出され、現地時間5月18日に行われた公式上映では6分間に及ぶスタンディングオベーションに沸いた。公開10日間で観客動員数85万人、興行収入11.9億円を突破している。

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 公式上映は1,300人収容の大光明電影院で18:30より行われ、上映終了後には鳴りやまない拍手喝采に包まれ、李相日監督がQ&A 舞台挨拶に登場。会場の観客に「ニーハオ」と中国語で挨拶。「今回、上海で上映できることは僕にとって特別な想いがあります。『国宝』の映画制作にあたり、学生時代にチェン・カイコー監督の『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993)を観た衝撃から、いつかこんな映画を撮ってみたいという想いを持っていた。それが歌舞伎をテーマに映画を撮ってみたいという思いにつながっていました」と制作秘話を語った。
 
 観客からの「涙が出るほど感動しました。吉沢亮さんと横浜流星さんは今までと全然違う表情でした。こんな素敵な演技ができると想像できなかったです。なぜ2人をキャスティングしたのかとても興味があります」という質問に、李監督は「顔が美しいからです(笑)」と会場の笑いを誘う一幕も。「喜久雄という人間を考えた時に、吉沢亮さんしか思い浮かばなかった。彼の中が見えないというか、いくら想像しても広い空間があいているような感じがしました。横浜流星さんはとても努力家。努力を惜しまない人で、歌舞伎俳優をどこまでも演じられると思いました」と真摯に答えた。

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 1993年に始まった同映画祭は、中国で唯一、国際映画製作者連盟公認の映画祭。映画文化の普及と映画産業の発展とを目的に、毎年10日間の会期中に国内外の約500作品が上映されている。日本映画が多く選出される映画祭としても知られ、日本特集や特別上映会などが人気を博している。カンヌ エクスプレスはカンヌ国際映画祭で上映された作品のうち、選りすぐりの作品をいち早くアジアで上映する狙いがある。同部門に作品された日本の作品として、2024年に『ナミビアの砂漠』(山中瑶子監督)、『化け猫あんずちゃん』(久野遥子監督・山下敦弘監督)、今年は『国宝』のほか『ルノワール』(早川千絵監督)、『遠い山なみの光』(石川慶監督)がある。(編集部・石井百合子)

※『さらば、わが愛/覇王別姫』
 文化大革命を背景に京劇界きってのスターに上り詰める二人の役者が時代の波に翻弄されるさまを追う物語で、亡きレスリー・チャンが稀代の女形を演じた。第46回カンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞)を受賞し、英国アカデミー賞、NY批評家協会賞、ゴールデン・グローブ賞など多くの映画賞で外国映画賞を受賞した。

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